〜夜〜
三人が集まった。神妙な面持ちである。
「まずは格納庫を確認しに行ってみよう。」
フォルカが仕切り、二人がついていく。
黙々と夜の転空魔城内を進んでいく三人、誰も一言もしゃべらないまま格納庫へたどり着く。
「なんかなぁ、見慣れたはずのモンもいつもと違って薄気味悪いなぁ。」
沈黙に耐え兼ねて真っ先に口を開いたのはアリオン。
「黙れ、怖いなら着いてこなくていいぞ。」
フェルナンドが冷たく言い放つ。
「別に怖いわけじゃねーよ…」
意外に大人しい返事、さすがのアリオンもいつになくテンションが下がっているようだ。
先頭に立って歩いていたフォルカは二人の方を振り向いてこう告げる。
「では、手分けして格納庫全体を見回ろう。」
手分けという言葉に二人とも引き攣るが、テンションだだ下がりの二人には反論する気力も無かった。それぞれに手分けして見回
りを開始する。
「…特に変わったことはないな…」
格納庫内をゆっくり見渡しながら歩くフォルカ。
そんなフォルカはいつの間にかマルディクトの格納庫に来ていた。
「兄さん…」
先の大戦で戦死した兄の愛機。機体だけはここに残されている。
兄の無念の死を思うと胸が苦しい、
そしてもはや声を聞くことが出来ないのかと思うと悲しくて涙まで浮かびそうになる。
漢ならいつまでも悲しんでいてはいけないとは思っている、
けれども理屈だけで治まらないのが人の心というもの。切なさが込み上げ、悲しげに俯いてしまう…
「…?」
と、俯いた視線が何かを見つける。
「…これは…」
マルディクトの足元をよく調べると、床に擦ったような跡がついている。
「…兄さん…」
もう一度マルディクトを見上げる。敬愛する兄の愛機は沈黙を守ったままフォルカを見下ろしている。
「ぎゃああぁぁ!!」
「うおああぁぁ!!」
突然沈黙を破る大きな悲鳴。フェルナンドとアリオンの声だ。
フォルカは声のした方へ急ぐ。
「大丈夫か?!二人と…」
「貴様ッ…!また俺を欺くつもりだったのか!」
「俺だって驚いたっての!ちゃんと前見て歩けよな!」
二人は何故か言い争いを始めていた。
「??…二人とも、何があったんだ?」
「いやね、こいつが俺にぶつかってくるから…」
「見回りしてる俺を驚かそうとして貴様がぶつかってきたんだろうが!!」
二人が言い争いをしてるのを見て思案するとフォルカは言う。
「手分けをするのは危険だろうか…よし、ここからは皆一緒に行動しよう。」
そのフォルカの言葉に二人の動きがぴたりと止まる。
「!?…そ、そうだな。」
「それがいいぜ!最初からそうすりゃよかったよな!」
皆一緒に行動すると聞いて内心ガッツポーズの二人はすぐに喧嘩を止めて少しばかりの元気を取り戻す。
「では、廊下の方も見て回ろう。」
修羅神格納庫を後にして、そのまま三人でぞろぞろと廊下に向かう。
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