
「…貴様、本当にやるのか?」
「ここまで来たんだ、もうそんなこと言いっこ無しだろ?」
やけに楽しそうなアリオンと戸惑い気味のフェルナンド。二人は再び地球に降りて来ていた。
その手にはしっかりと例のアルバム。
「絶対分からないぜ、この写真」
アリオンは歩きながらぱらぱらっとアルバムをめくって、華の笑顔の幼なきフォルカの写真を見る。
「俺でさえ騙されたのだ、他の奴らに分かってたまるか。」
くやしげに吐き捨てるようにフェルナンドは答える。
そう、アリオンの思い付いた楽しいこと・・・
地球の皆にこの写真を見せてその反応を楽しむつもりなのだ。
「お、いたいた」
そして早くも最初のターゲットが…
- エクセレンの場合 -
「邪魔するぜ♪」
「あらぁ、イケメンお二人で何の用?」
「いけめ…?」
いつもの人懐こい笑顔で迎えるエクセレン。
フェルナンドはイケメンという言葉の意味がわからず首を傾げているが、それにはお構いなしに早速アリオンが悪乗りしだす。
「おいおい、俺に惚れると火傷するぜ?」
「やん、火遊びは大好きよん♪」
「エクセレン…」
と、横にいたキョウスケが相変わらずの仏頂面のまま口を挟む。
「まっ!キョウスケったら妬いてくれたの?もぅ〜無愛想な顔して可愛いんだから〜。」
「…エクセレン…」
諦めの混じったような声音でため息まじり、本音はエクセレンのみ知る、…のだろう、多分。
「ひゅ〜お熱いねぇ♪」
「そう見えるぅ?嬉しい♪」

すかさず冷やかすアリオンとノリノリのエクセレン。今度はフェルナンドがため息をついた。
「貴様ら…。そうだ、これを見てくれないか。」
二人のノリに耐え兼ね、思い出したようにアリオンの手からアルバムを奪い取り開いて見せる。
「きゃ〜かわいらしい!
私達もこんな子供が欲しいわね、キョウスケ♪」
エクセレンが早速黄色い声をあげて反応を示す。
「やっぱり正体はわからないらしいな…」
アリオンがフェルナンドに小声で耳打ちする。
「いいわね〜女の子だったらこんな風に可愛い服着せてお写真撮って…」
さらに夢見るエクセレン。
「男だとも思われんらしいな」
予想通りの反応に呆れながらも納得するばかり。
ここまで上手く行くとは、こそこそ会話する二人にエクセレンは向き直ると
「で、この子誰のお子さんなのかしら?」
にこやかに爆弾発言をしてくれる。呆れるフェルナンドが説明しようとする前に
「いや〜照れるなぁ♪」
嬉しそうに笑いながらフェルナンドの腰に手を回すアリオン。
「なぜ貴様が照れる!ええい、くっつくな欝陶しい!!」
(ドカバキッ☆)
機神拳が炸裂した。
「いや〜思った通り、見事な騙されっぷりだったねえ」
「本当に説明しなくてよかったのか?」
「いいんじゃない?そういう雰囲気じゃなかったし」
結局、あのまま明るい家族計画話に(一方的にだが)花が咲いて、それ以上説明するのもはばかられ二人は帰ってきたのだっ
た。
「二人とも、帰ったのか」
そんな二人を迎えるフォルカ。その手には…
「ん?フォルカ、それは…」
「ああ、フェルナンド、見てくれ。他にもアルバムが残ってたんだ。」
嬉しそうにアルバムを開いて手渡す。
それは今まで見ていた家族アルバムとは少し違っていた、何せフォルカの写真しかないのだ。
各写真の横にはそれぞれ、
『フォルカお花屋さんへ初めてのお使い』
『フォルカお料理のお手伝い』
『フォルカおめかしして参内』
『フォルカお気に入りのパジャマでおねんね』・・・などなどメモが記されている。
閉じてタイトルを見てみると『フォルカの成長記録』とまで題してあった。
「兄さん…」
フォルカは懐かしみ愛おしむように呟いて目を閉じている。アリオンが半分呆れた声で呟いた。
「もうさ…これは兄バカ通り越して親バカだよな…」
「…否定できんな…」
そう、そして親バカアルティスの遺産はこれで留まるはずがないのだった。
〜続く〜
|
|
|