翌日
アリオンとフェルナンドは、二人きりで春の花の香りのように甘いデート…になるはずだった…が、
「フェルナンド!今、猫がいたぞ!」
「おーい、そっちじゃないぞフォルカー。」
「…あれぇ、なんで俺達二人きりじゃないの?」
そこには無邪気にはしゃぐフォルカの姿。
「貴様と二人きりになると何されるかわからんからな。」
フェルナンドが軽くアリオンを睨む。
「それでフォルカも呼んだって?
俺ってそんなに警戒されてんのか…俺様ちょっと寂しい。」
泣き真似をしても、わざとと分かっているフェルナンドはあっさりスルーして。
「フォルカだって楽しんでるんだ、いいだろ?」
「そりゃ、まぁ。…でもやっぱりロマンチックなデートがしたかったなぁ〜」
アリオンが不満げに呟くが…
「フェルナンド〜!」
「今度は何を見つけたんだ?」
アリオンそっちのけでフォルカの元へ走って行ってしまうフェルナンド。
「う〜ん、昔の話出したのは失敗だったかな?」
昨日…デートに誘う時、
『ああ…。お前、ちっちゃいころフォルカといつも春一番の花を探しに行ってたんだって?アルティスから聞いたぜ。花…嫌いじゃないんだ
ろ?』
確かにそう言った。
うまいことフェルナンドを胸キュンさせたつもりだったが…どうやら昔の記憶を余計に呼び起こしてしまったらしい。
二人きりになると何されるかわからないだなんて言ってはいたけど、半分は口実で。やはり、双子のように育った大事な親友にも花を見せ
たいという思いがあるのだ。こんなにはしゃいで…
「…ま、いっか、二人とも楽しそうだし。」
二人きりのデートにならなかったのは残念だけれど、楽しそうな二人の姿を見ていると、これも悪くないと思えてくる。
「…俺も、楽しいや。」
呟いて、くすりと笑う。
「おーい、俺にも見せてくれよ!」
アリオンも二人の元へ駆け出した。
暖かい春の空気が三人を優しく包み込む。
終
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