「アリオンを見なかったか?」
「奴がどうした?」
修羅王の正装である鎧姿で困った顔のフォルカ。
がっちりとした全身鎧を着込んでいても弱った表情でおどおどしているのがどことなく可愛い。
「軍師の仕事をほったらかしていなくなってしまって…困っている。」
ということらしい。
「…なるほど、わかった。俺に任せろ」
フェルナンドは何かを思い付いたらしい、にやりと不敵な笑みを浮かべた。
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「アリオン」
長い陣羽織を翻しアリオンを見下ろす、将軍の出で立ちのフェルナンド。
「ハニー!俺に会いに来てくれたの?」
フェルナンドのそんな威圧感などものともせず陽気な声で返事をするアリオン。
派手な軍師の正装もだらしなく着崩して、そういえばこいつの服装は元々珍妙だったななんて心の中でため息をつきな
がら、
「ああ、そうだ。話があってな。」
「うん、なになに?」
にこにこしているアリオンに厳しい口調で話す。
「貴様…仕事もしないでほっつき歩いているそうだな?」
「うっ。…やだなぁフェルちゃん、おカタイこと言っちゃって〜。」
いつものようにへらへらとして受け流そうとするアリオンにさらに続ける。
「ほう…貴様がそういうつもりなら別に構わんが。」
「へ?どういうこと?」
フェルナンドはいかつい甲冑を纏った腕で腕組みをし、軽くアリオンを睨みつけながら言う。
「織姫と彦星は遊びにかまけるばかりに仕事をしなくなって引き裂かれたそうだな。」
「!!」
焦った表情をのぞかせたアリオンに、にやりと笑うフェルナンド。
「お前が仕事をせんのなら、同じ結果にならんとも言えん…」
「な!?」
「本当に織姫と彦星の気持ちを味わうことになるかもしれんな。
…じゃあな。」
フェルナンドはそれだけ言うと背を向ける。アリオンは大慌て。
「ま、待って!仕事する!するから待ってよハニー!!」
それ以来、アリオンは前より少し真面目に仕事をするようになったそうな。
終
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